マインドフルネス身体知ラボ

心がざわざわ、落ち着かない… 身体の声を聞くマインドフルネスで感情と上手に付き合う方法

Tags: マインドフルネス, 身体の声, 感情, ストレスケア, セルフケア

毎日、家事に育児に仕事にと、目まぐるしく時間が過ぎていく中で、「なんだか心がざわざわする」「ちょっとしたことでイライラしてしまう」「理由は分からないけれど、気分が落ち込む」と感じることはありませんか。

ついつい後回しにしてしまいがちなご自身のケアですが、こうした心の状態は、実はあなたの身体からの大切なメッセージかもしれません。

「身体の声を聞く」と聞くと、少し不思議な響きに感じるかもしれませんが、これは決して特別なことやスピリチュアルなことではありません。あなたが普段意識しない身体の感覚に意識を向け、そこからご自身の心や感情の状態を理解しようとする、地に足のついたアプローチです。

「身体の声を聞く」とは、感情とどうつながるの?

私たちは普段、感情を「頭で考えるもの」として捉えがちです。「悲しい」「嬉しい」「怒り」といった感情そのものに意識を向けますが、実は感情は常に身体の感覚と密接に結びついています。

例えば、 * 不安を感じると、お腹が締め付けられるような感覚がある * 緊張すると、肩がこわばったり、手のひらに汗をかいたりする * イライラすると、胸のあたりが熱く感じる * リラックスしていると、身体がじんわりと温かく感じる

このように、感情は特定の身体感覚を伴って現れることが多いのです。

「身体の声を聞く」とは、まさにこの「感情に伴って現れる身体の感覚」に意識的に気づく練習をすることです。心がざわついているときに、その「ざわつき」が身体のどの部分で、どのように感じられるかに注意を向けてみる。そうすることで、感情を客観的に捉える手がかりが得られるのです。

なぜ、感情の波に疲れてしまうの?

現代社会は情報過多で、常にやらなければならないことに追われています。私たちの意識は、過去の後悔や未来の心配、あるいは目の前のタスクへと向きがちです。その結果、今ここで感じている身体の感覚や、そこに伴う感情に気づく機会が少なくなってしまいます。

感情に気づかずにいると、それは身体のどこかに留まり、じわじわと蓄積されることがあります。そして、ある瞬間にコップから水があふれるように、感情が爆発したり、急に落ち込んだりといった形で現れることがあります。感情の波に「振り回される」と感じるのは、このように感情が湧き上がる前の小さなサインを見過ごしてしまっている状態と言えるでしょう。

身体の声を聞く練習「マインドフルネス」

ここで役に立つのが「マインドフルネス」です。マインドフルネスとは、「今、この瞬間の体験に、意図的に、評価や判断を加えることなく注意を向けること」です。

マインドフルネスの実践では、呼吸や身体の感覚、音、思考、そして「感情」といった、今この瞬間に起こっているあらゆることに意識を向けます。特に、身体の感覚に意識を向けることは、マインドフルネスの基本的な実践の一つです。

科学的な研究でも、マインドフルネスの実践が、感情のコントロールに関わる脳の領域(前頭前野など)に影響を与えたり、感情的な刺激に対する脳の応答(扁桃体の活動など)を穏やかにする可能性が示唆されています。これは、感情そのものを否定したり抑え込んだりするのではなく、感情が湧き上がってきたときに、それを「気づき」「受け流す」といった、感情との新しい向き合い方を学ぶことにつながります。

日常でできる「身体の声を聞く」マインドフルネス

特別な場所や時間が必要なわけではありません。日常生活の中で、ほんの数分でも身体に意識を向ける時間を作ってみましょう。

  1. 呼吸に意識を向ける(1〜3分)

    • 椅子に座るか、立ち止まって、楽な姿勢になります。
    • 目を閉じても、薄く開けていても構いません。
    • 今している呼吸に意識を向けます。鼻先を通る空気の感覚、胸やお腹の膨らみやしぼみなど、呼吸に伴う身体の感覚をただ感じます。
    • 他の考えが浮かんできても大丈夫。それに気づいて、また優しく呼吸の感覚に意識を戻します。
  2. 感情に伴う身体感覚に気づく練習(感情が湧いた時に)

    • イライラや不安など、何か強い感情が湧いてきたな、と感じたら、一度立ち止まります。
    • その感情に名前をつける必要はありません。「あ、何か感情があるな」と気づくだけで十分です。
    • そして、その感情が身体のどこで、どのように感じられるかに意識を向けます。胸がドキドキする、胃がキリキリする、肩が重いなど、感じられるままに観察します。
    • その感覚が良いか悪いか、好きか嫌いかといった判断をせず、ただ「今、身体にこんな感覚があるんだな」と観察します。
  3. 日常動作の中でのボディスキャン(数分)

    • 洗い物をしている時、掃除機をかけている時、お茶を淹れている時など、日常の動作中に意識を向けます。
    • 手のひらの感覚、足の裏が床に触れる感覚、腕を動かす時の筋肉の感覚など、動作に伴う身体の感覚を丁寧に感じてみます。
    • 心が別のことを考えていることに気づいたら、優しく今の身体の感覚に意識を戻します。

これらの練習を通して、感情が「自分自身そのもの」ではなく、「身体に伴って現れる一時的なもの」として捉えられるようになっていきます。

身体の声を聞くことで期待できる変化

身体の声に意識を向ける練習を続けることで、感情の波に巻き込まれそうになった時に、一歩引いて自分を観察する心の余裕が生まれることがあります。

これは劇的な変化ではなく、少しずつ、穏やかに起こる変化です。まるで、これまで聞こえにくかった身体のささやきに、耳を澄ませる練習をするようなものです。

あなた自身を労わる時間として

「身体の声を聞く」マインドフルネスは、忙しい毎日を送るあなた自身を労わるための大切な時間になります。ほんの数分でも、ご自身の内側に意識を向ける時間を持つことで、心と身体のつながりを感じ、感情との新しい付き合い方を学ぶことができます。

まずは今日のどこかで、短い時間でも良いので、ご自身の身体の感覚に意識を向けてみることから始めてみませんか。


「マインドフルネス身体知ラボ」では、科学的な視点を交えながら、心と身体のつながりやマインドフルネスの実践方法について解説しています。他の記事もぜひご覧ください。